泊まれる本屋はなぜ消滅?BOOK AND BED閉店の真相と現在
「本を読んでいたら、いつの間にか心地よい眠りに落ちていた」――そんな読書好きにとって至福の瞬間を具現化し、2015年11月の東京・池袋本店オープンとともに世界的な話題をさらった「泊まれる本屋」ことBOOK AND BED TOKYO。天井までそびえ立つ巨大な本棚のなかにベッドが組み込まれたアイコニックな空間は、SNS文化の隆盛とインバウンド需要の波に乗り、瞬く間に東京のカルチャーアイコンへと登りつめました。
しかし、京都、心斎橋、新宿と全国へ積極的な拡大を続けていた同ブランドは、突如として店舗の相次ぐ閉鎖に見舞われ、2021年には運営会社であった株式会社アールストアが経営破綻(民事再生法の適用申請)を発表する事態へと発展しました。熱狂的な支持を集めたはずの空間ビジネスで何が起きていたのか。2026年現在の各拠点のリアルな動向と、表舞台では語られなかった構造的課題を検証します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:池袋本店・京都・心斎橋などの主要店舗は相次ぎ閉店しており、運営元だった株式会社アールストアは2021年5月に民事再生法を申請して経営破綻した。
- 要点2:閉店の主因はコロナ禍によるインバウンド蒸発と三密回避の直撃に加え、高額な都市部家賃負担やドミトリー特有の防音性・滞在快適性の限界によるリピート率低下にあった。
- 要点3:2026年現在、ブランドは事業承継を経て再編され、新宿店などを中心に「泊まり」から「カフェ・コワーキング(デイユース)」を軸とした高付加価値モデルへと舵を切っている。
【ブームの原点】「泊まれる本屋」の革新的なコンセプトと特徴
BOOK AND BED TOKYOが提示した最大のイノベーションは、本を販売する一般的な書店でも、単に寝る場所を提供するだけのカプセルホテルでもなく、「読書体験を通じた心地よい寝落ち」そのものを商品化した点にありました。
仕掛け人となったのは、不動産セレクトショップ「R-STORE」を運営していた株式会社アールストアです。内装デザインには建築家・谷尻誠氏率いるSUPPOSE DESIGN OFFICEを起用し、選書にはカルチャー層から絶大な信頼を集めるSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(SPBS)が参画。青を基調とした洗練されたビジュアルと、無骨な合板で組まれた巨大本棚のなかに潜り込む非日常的なギミックは、スマートフォンのカメラ越しに強烈なインパクトを放ちました。
宿泊客は「本棚の奥に眠る」という子どもの頃の秘密基地のような興奮を味わい、ロビーフロアではデイベッドに寝そべりながら夜遅くまで読書に耽る。こうした泊まれる本屋のコンセプトと特徴は、CNNやガーディアン紙など海外有力メディアでも大きく報じられ、訪日外国人観光客と国内のミレニアル世代を中心に、予約困難なプラチナチケットと化していきました。
BOOK AND BED TOKYO 閉店理由と真相|池袋本店・心斎橋・京都の撤退劇
飛ぶ鳥を落とす勢いだったブランドは、なぜ急速な失速を余儀なくされたのか。関係者の証言や当時の業界動向を追うと、いくつかの複合的なボトルネックが浮かび上がってきます。
最大の引き金となったのは、言うまでもなく2020年初頭から世界中を襲った新型コロナウイルスの感染拡大です。当時、同施設の稼働率を支えていたインバウンド需要が完全に途絶えただけでなく、法律上「簡易宿所」に分類されるドミトリー形式(相部屋構造)は、換気や三密回避への強い懸念から真っ先に敬遠される対象となりました。
しかし、取材を進めると、パンデミック以前からすでにビジネスモデル上の構造疲労が始まっていたことが分かります。当時の利用客や宿泊業界の専門家が指摘していたBOOK AND BED TOKYOの閉店理由と真相には、以下の3つの決定的要因が存在していました。
第1に、「写真映え(コト消費)」の消費スピードの速さです。一度訪れてSNSに写真を投稿すれば満足してしまうユーザーが多く、日常的な出張や旅行で選ばれる「リピート宿泊」へと定着しにくかった点が挙げられます。
第2に、宿泊施設としての快適性・居住性のトレードオフです。「本棚の中に泊まる」という構造上、合板1枚で仕切られた空間は遮音性が極めて低く、隣室の寝息やページをめくる音、キャリーケースの開閉音がダイレクトに響き渡る環境でした。耳栓の配布など対策は講じられていたものの、「音が気になって熟睡できない」「マットレスが薄く体が痛む」といった口コミが徐々に蓄積し、純粋な宿泊目的の客層が離れる要因となりました。
第3に、一等地出店に伴う重い固定費負担です。池袋駅西口至近や京都・祇園の目抜き通り、大阪・心斎橋といった超好立地に大型フロアを構えていたため、稼働率の低下がダイレクトに莫大なキャッシュアウトへと直結しました。結果として、2020年から2021年にかけてBOOK AND BED TOKYO 池袋本店の閉店ニュースが流れると同時に、BOOK AND BED TOKYO 心斎橋・京都店舗の経緯も営業停止から完全撤退へと急速に収束していきました。
株式会社アールストアの経営破綻とブランド再編の経緯
店舗網の急速な収縮の背後で、企業としての存続を揺るがす事態が進行していました。2021年5月、創業母体である株式会社アールストアが東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請し、実質的な経営破綻に至ったのです。当時の帝国データバンク等の調査によると、負債総額は約14億円規模にのぼりました。
もともと本業であった不動産仲介事業「R-STORE」は堅調な収益基盤を誇っていましたが、全国展開を急いだ宿泊事業「BOOK AND BED TOKYO」が抱える空室損とリース料、出店投資の減損処理が本業のキャッシュフローを激しく侵食。多額の負債を抱え込むかたちで自力再建を断念せざるを得ませんでした。
その後、民事再生手続きのなかでスポンサー支援を受け、不採算であった宿泊店舗のスクラップを進める一方、ブランドの知的財産権および一部の営業拠点は新たな運営体制へと譲渡・承継されました。この事業再生プロセスを経て、ブランドは従来の「拡大路線」から「選択と集中」へと根本的な方針転換を遂げることになります。
【データ検証】全盛期と現在の業態・拠点別ステータス比較
創業期から現在に至るまでの各店舗の変遷と、ビジネスモデルの変化を客観的データで整理しました。
| 店舗拠点 | 開業年 / 最盛期の状況 | 2026年現在の営業状況 | 編集部の分析・教訓 |
|---|---|---|---|
| 池袋本店(東京) | 2015年開業 / 稼働率90%超の旗艦店 | 完全閉店 | ブランドの原点だが、ビルの老朽化とコロナ禍の稼働低下が重なり撤退。 |
| 京都店(祇園) | 2016年開業 / 地ビールと読書の融合 | 完全閉店 | インバウンド依存度が極めて高かったため、渡航制限の打撃を最も強く受けた。 |
| 心斎橋店(大阪) | 2018年開業 / モノトーンカフェ併設 | 完全閉店 | 出店攻勢のピーク時の拠点。固定費の重さと競合ホステルの乱立に埋没。 |
| 浅草店(東京) | 2018年開業 / 畳敷きの和モダン空間 | 完全閉店 | 観光立地に特化しすぎた設計が、国内需要への柔軟な転換を阻害。 |
| 新宿店(歌舞伎町) | 2018年開業 / カフェ・パブリック強化 | カフェ・デイユース中心に営業継続 | 「泊まる」から「日中過ごす」へ収益構造をピボットし、唯一の生存拠点へ。 |
【2026年最新情報】新宿店のカフェ・デイユース利用と宿泊予約の現在地
では、2026年現在におけるBOOK AND BED TOKYO 現在の営業状況はどうなっているのでしょうか。最新の調査によると、ブランドのアイデンティティを唯一継承して営業を継続しているのが「新宿店」(歌舞伎町・新宿東宝ビル至近)です。
現在の新宿店は、全盛期の「簡易宿泊所」という枠組みから大きく脱皮し、カフェ利用およびデイユース(日帰りコワーキング・休憩利用)に主軸を置いた複合サードプレイスとしての地位を確立しています。
① 話題を呼び続ける「黒」を基調としたカフェ体験
新宿店の大きな牽引役となっているのが、BOOK AND BED TOKYO 新宿店カフェ利用の根強い人気です。竹炭を練り込んだ「ブラックラテ」や漆黒のフルーツサンドなど、徹底してモノトーンにこだわったフード&ビバレッジメニューは、現在もZ世代や感度の高いクリエイター層から圧倒的な支持を集めています。ワンドリンクオーダー制で、宿泊客でなくとも気軽に本棚に囲まれた独特の世界観にアクセスできる仕様が功を奏しています。
② デイユース料金プランと利便性
テレワークやノマドワークが完全に定着した現在、BOOK AND BED TOKYO デイユース料金プランは、電源・Wi-Fiを完備した快適な作業拠点として重宝されています。一般的には1時間あたり約700〜800円前後、フリータイム利用(数千円台)などのプランが用意されており、コワーキングスペースとブックカフェの中間のような贅沢な集中空間として機能しています。
③ 宿泊機能と最新の予約システム
気になる宿泊機能について、BOOK AND BED TOKYO 宿泊予約方法は公式サイトや大手OTA(Booking.comなど)を通じて限定的に受け付けられています。ただし、全盛期のように毎晩満室を詰め込むオペレーションではなく、プライベート空間を確保したプラン設定や、イベント・撮影用途とのハイブリッド運用が主流です。また、館内は完全キャッシュレス決済が徹底されており、現金が使えない点には注意が必要です。

【実態検証】利用者の生の声とネットの評判に見る「リアル」
大手クチコミサイト、SNS、知恵袋などの蓄積された一次情報を徹底的に洗い直すと、BOOK AND BED TOKYO ネットの反応と評判には、賞賛と失望が極端に二極化していた事実が見て取れます。
「読書好きにとってはまさに天国。薄暗い間接照明のなかで、気になっていた写真集やカルチャー雑誌を読みながら眠りにつく体験は唯一無二」「黒いチーズケーキとカフェラテのビジュアルが美しく、新宿で落ち着いて作業できる最高の穴場」といったポジティブな評価が数多く寄せられています。特にカフェや日中利用に関する満足度は極めて高水準を維持しています。
一方で、宿泊利用者の本音レビューからは、現場のシビアな現実が浮き彫りになっていました。「隣のベッドのいびきや寝返りの音が丸聞こえで、神経質な人は一睡もできない」「本棚の梯子の昇降がきつく、大きな荷物を整理するスペースがほとんどない」「シャワーブースや洗面所が混雑し、順番待ちがストレスだった」といった、居住空間としての物理的制約に対する苦言です。カルチャーとしての「映え」と、生活インフラとしての「安眠」という二律背反を、施設側が最後まで完全に埋めきれなかったことが伺えます。
【プロの結論】体験型ホステルが直面した教訓|向いている人・おすすめできない人の判断基準
BOOK AND BED TOKYOの軌跡は、都市社会学における「空間の記号消費」が直面する宿命を鮮やかに示しています。空間のビジュアルや世界観を消費する「コト消費」は、初期爆発力こそ圧倒的ですが、利用者が体験を一度自己完結させてしまうと再訪動機が急速に減退します。宿泊業の本質である「快眠・回復」という機能的価値を軽視して情緒的価値のみに依存したビジネスモデルは、外部ショックに極めて脆弱であるという教訓を残しました。
この教訓を踏まえ、現在の同施設を最大限に満喫できる人と、避けるべき人の基準を客観的に提示します。
【利用を強くおすすめできる人】
- 新宿駅周辺で、静かでクリエイティブな作業・読書スペースを求めている人(デイユースやカフェ利用の費用対効果は抜群)
- デザイン建築やモノトーンの世界観に浸り、非日常な時間を味わいたい人
- どこでも熟睡できる体質で、カプセルホテルやドミトリーの生活音に全くストレスを感じない旅慣れた人
【利用に慎重になるべき・おすすめできない人】
- 翌日に重要な仕事や予定を控え、完全な静寂と熟睡を最優先したい人(ホテルの防音性を期待すると確実に後悔します)
- 広いプライベート空間で荷解きをし、ゆったりとバスタイムを楽しみたい人
- 一般的なホテル並みの手厚いコンシェルジュサービスやアメニティを求める人
【book and bed tokyo】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、池袋本店や京都店、心斎橋店で宿泊することはできますか?
A1:できません。池袋本店、京都店、心斎橋店、浅草店、福岡店はすべてすでに完全閉店しています。現在体験できる拠点は新宿店のみとなっています。
Q2:新宿店は宿泊せず、カフェやデイユースだけの利用でも大丈夫ですか?
A2:はい、全く問題ありません。むしろ現在の新宿店はカフェ利用や短時間のデイユース(時間制の読書・作業スペース利用)がメインの利用形態となっており、宿泊客でなくとも気軽に立ち寄ることができます。
Q3:館内で現金での支払いは可能ですか?
A3:館内は完全キャッシュレス決済となっています。クレジットカード、主要な交通系ICカード、各種QRコード決済のみの対応となっており、現金での支払いは一切受け付けていないため事前の準備が必要です。
まとめ:空間消費カルチャーの転換点と今後の選択
「泊まれる本屋」という鮮烈なアイデアで日本のホスピタリティ市場に風穴を開けたBOOK AND BED TOKYO。その栄枯盛衰の歩みは、単なる一企業の倒産劇にとどまらず、体験型空間ビジネスがいかにして日常の機能性と持続可能な収益性を両立させるべきかという重い命題を投げかけました。
全盛期の熱狂が去った2026年の今、新宿店に残るその空間は、過剰な宿泊拡張から解き放たれ、落ち着いたカルチャーカフェ・ワークプレイスとして新たな価値を紡ぎ出しています。「本棚の奥で過ごす贅沢な時間」を求めているなら、泊まることだけにこだわらず、午後のひとときを静かに本と珈琲に委ねるデイユースから体験してみてはいかがでしょうか。 (出典: book and bed tokyo(Yahoo!ニュース))